タイムリミットは君にサヨナラをするまで。
近くで笑顔を見せられるその人に、私は視線をそらす。
……最悪。
まさかこんな速いとは思わなかった。
大誤算だ。
なんでこんな所まで来ちゃったんだろう。
初めての世界にあちこち走り回って逃げて、たどり着いたその先は、行き止まりだなんて……。
「もう逃げられないわね?」
「うっ」
「さて、返してもらいましょうか」
「い、やだ」
取られまいと固く胸に抱くA4サイズの手帳。
それはさっき私に語った内容が事細かく書き込まれているはずだ。
そう思ったから今こうして壁に迫られていても放さずにいる。
笑う神様を見上げる。それから睨んだ。
すでに勝ち目はないような雰囲気を醸し出しているけど、そんなの気にしない。
この手は絶対に何がなんでも、放さないんだから!