『コーン』な上司と恋なんて
「テレビも見ていいですから」


「見たい番組なかったんだよ」


「だったらDVDでも見ます?あ、でも、私が録ってるのってドラマくらいだ」


しまった…と思った。彼氏なんてここ何年もいないもんだから、自分が愉しめる番組しか録ってなかった。



(弱ったな。どうしよう)


包丁を使ってるところなんて見せたくないし、「鶴の恩返し」じゃないけど覗かないでも欲しい。


「さっき本棚の中で見つけた物なら見てもいいか?」


「えっ…いいですよ」


ラッキーとばかりにOKした。


(キッチンに立ってられるよりかはいい)


そう思って安請け合いをした。
課長はニヤッと笑い、私はその笑顔に首を傾げた。



食材を切り分けて鍋物のベースとなるスープを作る。
コーン缶は味噌漉しで裏ごしして、コンソメスープの素を入れる。隠し味に…と醤油を数滴落とした。

その中に軽く下味を付けた鶏肉を入れて、ウインナーや玉ねぎ、人参、ジャガイモなんかを放り込む。

まるでシチューのようだけど鍋ってことで許してもらおう。

課長はきっとまた笑うに違いないけど。



(今夜の〆はご飯にしよう。チーズを入れてリゾット風にしてみるんだ)


これが案外、ワインのおつまみには最高なんだよね。

クツクツ…と煮込んでる間に課長が何を見てるのかが気になって、部屋へ続くドアを開けた。


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