『コーン』な上司と恋なんて
ぽかん…としたままの顔つきで、課長は私のことを見てる。
右手にお玉を握りしめ、左手には取り皿を持ったままで。

その姿を目に収めながら、課長の腕辺りに目線を下げた。


「……新年会の時に、課長と金澤さんがデキてると噂してる人達がいたんです。お店に入った時も私とは違う態度でしたし、何か繋がりがあるんだろうな…とは感じました。そしたら次の日に先輩が、『課長はバツイチだと言ってた』というのを小耳に挟んでしまって。別れた奥さんはキャリアウーマンだったらしいと話してたから、それはやっぱり金澤さんのことかなぁ…と感じたんです……」


「元奥さんの店で新年会なんてやり辛かったですよね。今更だけど、申し訳ありませんでした…」と謝った。


課長はお玉を握ってる手をゆっくりと離し、テーブルの上に皿を置く。

私に向けて困った様な表情を浮かべ、どう弁解をしたらいいのかを考えてるみたいだった。



「……ちょっと、ごめん。何てコメントしていいか迷う……」


課長の言葉に胸が苦しくなる。
私に向けられた目が、真剣だけど戸惑ってる。


「……芦原さんはその話を聞いて、全部間に受けてるんだ?」


質問とも思える感じの語尾のイントネーション。

私は頭からそうだとは思えない。
思えないんじゃなくて、思いたくないから聞いてる。


「私は…全部を信じてるんじゃなくて……」


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