『コーン』な上司と恋なんて
「でも、俺がバツイチだと思うんだろう?」



「………」


それには返事をしたくなくてもしないといけない気がした。

私の言い方が悪くて、課長が少し怒ってるようだったから。



コクッ…と首を縦に動かした。

課長の深い溜め息が聞こえ、胸の奥が急に狭まった。


「そうか…」


残念そうに呟くのはどうして?

ひょっとして違うから?


淡い期待だ…と思いつつも顔を見た。

課長の横顔は複雑そうで、触れてはいけない事だったんだ…と反省した。


「すみません…」と謝りたくても声が出せないまま。

課長の顔を見てたら喉の奥に言葉が掻き消されていく。



「……その回答は今夜は保留にさせてくれないか。明日、俺の部屋で話す」


それでいいか?…と聞き直された。

一晩首が繋がったのか。それとも、単純に焦らされただけなのか。



「……はい、いいです」


何れにしろ、私の恋は明日で終わりを迎えるのかもしれない。

こんなウソを上手に言える上司に恋したばかりに、私は戸惑わされてばかりいる。


「そうと決まれば食べるか。折角芦原さんが作ってくれたのに残したら勿体無い」


再びお玉を取り上げる。

課長の笑顔が空々しく見えて、どうにも酔えない夜になった。


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「ご馳走様」


少し酔ってる雰囲気の課長は、食事をしたら「帰るか」と言った。


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