『コーン』な上司と恋なんて
(ついてない。やっぱりあの御神籤は早目に結びに行こう)


何かの番組で御神籤はどんなに大吉でも持ち帰らない方がいい…と言ってた。
運ってものは、その時だけのものなんだ、きっと。


パスケースの中に入れてる御神籤を思いながら出勤した。

課長は始業時間ギリで出社してきた。




「悪い!寝過ごした!」


アラームが鳴らなかった…と言い、笑いながら席に着く。

近くの席に座る先輩から、ネクタイが曲がってますよ…と指摘されてる。


「本当だ。これで電車に乗ってたのかー」


参ったなぁ…と照れくさそうに笑ってる姿なんて見たくない。

土曜日のことが、まるで夢みたいに思えてくる。


「何だか今朝の課長はご機嫌ね」


ハンドタオル片手に未希が呟く。


「そうね」


私は素っ気ない一言を返した。


未希には課長との夜については話さなかった。
何もなかったんだから話しても仕方ないと思って。


なるべく課長の所へ行かなくてもいいように仕事をした。
パソコンの画面に隠れるように、前屈姿勢で入力を続ける。

いつもなら月曜日の午前中は仕事が捗らない。だけど、今日はお昼休みに用事があって、早目に仕事を切り上げなければならなかった。


12時になって、先ずは先輩達が立ち上がる。

課長のデスクへ行き、「お昼をご一緒にいかがですか?」と誘う。

その誘いに課長が巧みなウソを吐いてる隙に、さっ…と椅子から立ち上がった。


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