『コーン』な上司と恋なんて
「翼?」


何処へ行くの?と未希が私を呼び止める。


「ごめん。今日はちょっと忙しいんだ」


後でゆっくり話すから…と手を振った。

悪阻のある未希はお弁当をデスクに乗せて、「うん、また後で」と手を振って見送ってくれた。



私はオフィスの外で約束のある相手を待った。

丁度、昼休みくらいの時間になりそうだと言われてるんだけど。



「まだかな〜〜」


風が思いきり冷たい。
晴れててもビル街には特有の隙間風が吹いてる。

手袋をしてても手が冷たくなってきそうで、これ以上体温を下げ過ぎないように脇を閉めた。



実は、明日は悠生のバースデイだ。

昨日、姉が電話を掛けてきたのは、それを教えてくれるのと同時に、前から欲しがってるオモチャを代わりに買いに行って…と頼みたかったんだ。


「翼がお菓子作りを教え込むもんだから、次は料理にまで目覚めちゃって大変なのよ!女の子じゃないのに、『お料理の道具、買って!』と煩いの」


おかげで子供用の包丁やカッティングシート、泡立て器にゴムベラに何故かクッキー型まで頼まれる始末で。


「それじゃあ私はお子様向けのお料理本でも探そうかなぁ」


そんな一言で本屋を何軒もハシゴした。
お昼も食べ損ねるくらいに吟味した料理本を、悠生は喜んで読んでくれたらいいけど。



「遅いな〜〜」


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