『コーン』な上司と恋なんて
由輝さんとお昼を食べてから庶務課に戻ると、未希がちょっと来て…と手招いた。


「何?どうかしたの?」


お昼休みの間に何かあったんだろうかと思った。
未希は給湯室へ着くと、クルッと向きを変えた。


「翼、驚かないで聞いて」


「何を?」


勿体ぶった未希の顔を覗く。


「実はさっき翼が出て行った後で、彼女は何処へ行ったんだ…と聞かれたのよ」


「誰に?」


フフフ…と不気味に笑う未希にゾッとする。
悪戯っぽい眼差しが細くなって、ボソッと耳に打ち明けられた。


「古手川課長よ」


ドキン!とする鼓動を胸に響かせたまま、「へ…へぇー」と呟く。


「何でだろう?何か用事があったのかな?」


必死で体面を取り繕う。
未希はニヤニヤしながら、「あったんじゃないの〜〜?」と肘で突いた。


「この間から何かと接点多くない?」


「そんなでもないよ」


「だったらこれを機に接点増やして来なさいよ」


クルッと向きを変えられ、トン…!と背中を押された。


「ちょ…未希!」


振り向くと、「グッドラック!」と親指を立てる。


「もうっ…」


無茶を言う。
私は今、課長との接点は増やしたくもない心境なのに。


「『何か御用事でしたか?』と聞くだけでいいんだから簡単でしょ!?」


「か…簡単だけどぉ……」


それも今、言い難いんだってば。


「行ってらっしゃ〜〜い!」



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