『コーン』な上司と恋なんて
「失礼しました」


ギクシャクと側をすり抜けた。

課長に背中を見られてるんじゃないかと思うと、余計でも緊張する。



「どうだった?」


デスクに帰ると未希がニヤつきながら聞いた。


「別に。大した用事でもなかったよ」


どうでもいい質問みたいに思えた。
本当にさっきの事が聞きたかったんだろうか。


パソコン画面の隙間から上座にいる課長の顔を見つめる。

書類の訂正を熱心そうにしてる目は上がる風もなく、はぁ…と短く溜め息が出る。



「恋煩いでもしてるの?」


鋭い未希の指摘にギクッと背筋が伸びた。


「と、トンデモナイ!」


あっ。

また声が固まっちゃった。



ーーーーーーーーーーーーーーー




「ふぅ……」


部屋の玄関ホールの明かりを点け、小さく息を吐く。

残業して疲れたのもあるけど、それ以外にも理由があった。


課長と言葉を交わし、未希と話してる途中で……



「ウッ…」


短い呻きと共に、未希がダッシュで席を立つ。
いきなり悪阻が襲ってきて、居ても立っても居られなくなったんだ。


暫くして戻ってきた未希は、真っ青な顔で課長の席へ向かった。



「申し訳ありませんが、体調が悪いので早退させて下さい」


未希は妊娠してることを課長に告げた。

驚いた課長は早く帰るように…と言い、未希の仕事を私にやるように…と指示した。


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