『コーン』な上司と恋なんて
「ごめんね、翼」


未希の顔色を見てると「いいから早く帰って」としか言えない。
お昼ご飯も戻したらしく、後から後から嘔気が込み上がってくるみたいだった。


「大事にしてよ。旦那さんには言った?」


「うん。メッセは送った。まだ既読にはならないけど…」


げっそりした状態で退社する未希を部署の外まで見送った。
席に戻ったら仕事が山積みで、(ゲッ!)と思ったりもしたけど。



「やるしかないか」


未希にはいつも手伝ってもらってるんだ。
こういう時くらい恩返しをしないと。


只でさえ遅い入力処理に手間取りながらも、何とか20時には終えた。
デスクの島には誰も残ってなくて、居るとしたら私と課長と2、3人の男性社員だけ。



「お先に失礼します」


席を立ち、パソコンのフタを閉めて挨拶をした。


「お疲れ」

「お疲れ様でした」


男性社員からは返事が戻るのに、課長からは挨拶もなし。
目線も上げないし、まるで聞こえてないかの様な素振りを見せる。



(自分で仕事振っといて、それ?)


無視されるのも辛いけど、わざわざ課長の席に行ってまで挨拶する必要もない。



「課長、お先に失礼します」


返事がないからって、そのままでは出づらい。
私が言い直したせいか課長は仕方なさそうに目線を上げ、「お疲れ」と言うと目を伏せた。




明らかに昨日までとは態度が違う。

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