『コーン』な上司と恋なんて
足が動かなくなって立ち尽くした。

足元に目線を下げてた課長の顔が上がり、ドキッと胸が震える。



「ど、どうも…」


何も言わないのもおかしいと思うからそう言って会釈した。
課長からの声が戻るのを待たず、足早に逃げようとしたら。



「芦原さん!」


思いがけず呼び止められて、ビクッと背中が仰け反る。



「……はい」


立ち止まって返事した。

怒ってる様な顔を見せられるのだろうか。
それは嫌だな…と思いながら目線だけを送った。



「今日…」


そう言ったきり黙る課長。
こっちは言い出したいことがわからず、話すのを待った。


「君はこの間、あんな風に言ってたけど嘘だったのか?」


主語もなしに問われ、何のこと?と首を傾げる。


「すみませんが、何のことですか?」


本当にそんな言い方じゃ何について問われてるのかが謎。
お願いだから、私が言ってた事というのを先に説明してからにして欲しい。


課長は私の言葉を聞き、目線を伏せながら「いや…」と首を振る。


「いいんだ。悪かった」


今度は謝るの?
一体何が言いたい?


「遅いから早く帰れ。呼び止めて悪かった」


歩き出すとコンビニの中に入ってしまった。
私が振り向いて背中を見ても、構う様子もなく棚の背後に行ってしまう。


何だか知らないけど疑われた?

私は今日、課長に何か疑われる様なことをしたの?


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