『コーン』な上司と恋なんて
(何もやってないよ。そもそも声をかけたのも、あの一回きりだし)


納得がいかない。
それであんな冷ややかな態度を取られたってこと?


「何なの、それ」


戸惑った後は怒りみたいなものが湧き上がった。

課長が出てくるのを待って、意味がわからないから教えて下さい…と言おうかと考えたけど。



「もういい!知らない!」


元からミステリアスな人だと思ってたんだ。

それを今日は久し振りに感じ取っただけ。

課長が勝手に怒ってるだけで、私には非がないと思う。


(だったら待たずに帰ろう!私を疑う前に、土曜日のことをちゃんと説明するのが先でしょ!)


頭にきて電車に乗った。

課長はもしかしたら、私が立ち去った後で反省して店から出てきたかもしれないのに。



悶々としながら腹立たしい気持ちを抱え込んで部屋に入った。
駅からずっと小走りに近いスピードで歩いてたから疲れきってた。


「ふぅ…」と短い息を吐いた後で、もう一度課長の問いを思い直す。


『あんな風に言ってたけど嘘だったのか?』


(何のことよ!)……としか考えれない。


課長が掴み所のない人だと知ってる。

でも今夜は、全く掴めない人だと思い知った。


私には難解過ぎる。

どうしてこんな課長に恋なんてしたんだ。



(でも……)



悔しいけど嫌いにもなれない。

どんなに頭にきても課長のことしか浮かんでこない。


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