『コーン』な上司と恋なんて
芦原が出て行った後、俺はやっぱり吹き出した。

あれ程喋り難そうだった日々が、あっという間に解消された様な気がする。


「この一週間、随分頑張って仕事してたしな」


この場所から見る限り、いつも真剣そうにやってた。
隣の席の白河は、青白い顔つきでフラフラして倒れそうだったが。


「面倒見がいいんだ」


そう言えば、猫と一緒に写ってた写真からもそんな雰囲気が漂ってた。

シャワーを浴びさせてたり、躾を覚えさせようとしてたり…と甲斐甲斐しく面倒を見てた。


時には同じポーズになって眠ってた。
どちらも猫みたいで、本当に可愛らしい子供時代だった。


ジョンの話を聞いて泣き出したことを思い出す度に、それらの写真が頭を過った。

自分と同じ悲しみを持ってる芦原が、より一層心の中に棲むようになった。



「だから、月曜日には何かと気持ちが騒めいたんだよ」


一緒に会ってた男が誰か分からなくて、態度が冷ややかになってしまった。

彼氏がいないと宣言した割に、あんなに楽しそうに話せる相手が居るんだ…と知ってショックだった。

ひょっとしたら俺は騙されたのか?なんて穿ったけど、良い様にしか裏切らない芦原に、そんな正当な嘘が吐ける筈がないと思い直した。



とにかく、今日はそのことを考えずに飲もう。

彼女の一週間の頑張りに、「よくやりました」と労いの言葉を掛けてやろう。


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