『コーン』な上司と恋なんて
弁解するのなら顔を見てからにしないと、全てを嘘だと受け取られそうな気がしたーー。



「この一週間…」


ぽつり…と出た言葉に、芦原が俺を見上げる。
その眼差しに振り向き、彼女を視界に収めた。


「よく働いてたな。具合の悪い白河の分までやってて偉かったよ」


褒めると思われてなかったのか、ジワッと目に涙が浮かぶ。



「…そんなの…当然です……」


潤んできた瞳を隠すように前を見直す。


「未希のお腹には赤ちゃんがいるんですから」


芦原の口から囁かれた「赤ちゃん」という言葉をリアルに感じた。
彼女もいつか、赤ん坊をお腹に宿す時が来るんだろうか。



「そうだな」


そう答えながら胸中は複雑になった。
俺の子供ならともかく、他の男の子供なんて宿して欲しくない気がする。


「そう言えば…」


月曜日に会ってた男のことが浮かんだ。
呟いた声に反応した芦原が、前から俺を覗くようにして見てる。


「…いや、何でもないんだ……」


白河には身体を大切にして欲しいな…と、悪い癖のように誤魔化した。
それには彼女も賛成して、「本当にそうですよね!」と声を強める。


「未希は頑張り過ぎなんです!私だったら妊娠が判った時点で仕事なんて辞めます!」


結婚したら専業主婦になるのが夢だと言ってた通り、芦原にもビジョンがあるようだ。


「俺も妻が無理して働くのは反対だな」


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