『コーン』な上司と恋なんて
数口続けて飲んでるのを見て、課長が何気なく聞いてくる。


「美味しいですよ。炭酸もそんなに強くないから飲み易くていいです」


「芦原さんは喉が渇いてるって言ってたもんな」


ははは…と笑う課長に見惚れつつ、おでんに箸を伸ばす。
三角形の厚揚げを見てるとあの稲荷神社で出会った日のことを思い出し、しんみりとした気分に陥った。


ちらっと窓辺に置いてあるものに視線を送ると、それに気づいた課長が囁く。


「先週、持って帰ったんだ。実家の仏壇で見てたら、離れ難くなってさ」


「やっぱり……ジョン君だったんですね」


帯の生地みたいな袋で包まれてるのは骨壷。
ジョン君みたいな大型犬のは、ぱっと見人間サイズと同じ位の大きさに見える。


「ちょっと、抱かせて貰っていいですか?」


「えっ!?抱く?」


「はい。私もよく頑張って生きたね…と、褒めてあげたいから」


立ち上がる私を課長は止めもしないで見てた。
初対面で触れ合った時は、その大きさに思わず身構えてしまったけど。



「こんなに小さくなって……」


そう呟いたら涙が零れ落ちてしまった。
ミィを亡くした時の悲しい気持ちが蘇ってくるみたい。



「よく……頑張ったね……」


課長は泣いてる私をどんな目で見てただろう。
顔を見るのも恥ずかしくて、背中を向けたまま骨袋を置いた。


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