『コーン』な上司と恋なんて
俯いたまま座ってた場所に戻ってくると、ティッシュの箱を差し向けながら課長が「ありがとう…」と囁く。

ティッシュに手を伸ばしながら目線を上げたら、課長の鼻も赤い。

まだ癒されてもない心の傷がわかってしまい、きゅっと胸が苦しくなってしまった。



「…土曜日はご実家へ帰られてたんですか?」


口から付いて出た言葉に(しまった…)と手で塞ぐ。

いきなり核心を突く様なことを聞いてしまった。

最初に数口飲み続けたワインのせいだ。


「うん、そうなんだけど…」


(お願いです、課長。今度こそ真実だけを話してーーー)



眼差しを向けながらそう願った。
課長はおでんを口へと運びながら、ゴクン…と缶ビールを飲み込む。



「実は、君に見せたい物を取りに行くついでに、ジョンの子供にも会ってたんだ」


「えっ……ジョン君に子供がいるんですか!?」


「いるよ。それを飼ってるのは君もよく知ってる人の親だ」


「えっ…」


真っ直ぐに私を見る人の唇が動き、ハッキリと声に出される名前に怯えた。



「金澤さんだよ」


(やっぱり…)


何となくそんな気がした。
課長が約束をキャンセルしてでも会いに行くんだとしたら、彼女が絡んでるんじゃないかと思った。


「何から話せば信じて貰えるのかわからないけど…」


そう言って話そうとする人の顔をじっ…と見据えた。


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