『コーン』な上司と恋なんて
「ジョンは8匹生まれた仔犬のうちの1匹だった。一番末っ子で毛色が母犬にそっくりで、まだ目も開かないけど触らせてくれると言うから触れさせて貰った。持たされると骨なんかグニャグニャで、まるでヌイグルミを触ってるような感覚だった」


可愛くて堪らなかった…と話す課長に笑みが浮かぶ。

私がミィの仔猫を見つけた時と同じくらいの嬉しさが、課長にもあったんじゃないかと思う。


「俺はその頃、地元を離れて今の仕事に就いてたし、飼っても面倒が見れないから断ったんだけど…」


お盆の時期で、地元を離れる前にもう一度だけ会いに行ったそうだ。


「忘れられなくてさ。あの柔らかい感触が」


それがキッカケで、結局家に連れ帰ったらしい。


「それなら私にも理解できます。ミィの仔猫達に対して同じように思いましたから」


犬と猫の違いがあっても、小さな命に対する可愛らしさは同じ。

ゆっくりと話す課長の声を頷きながら、ついワインを飲み過ぎてしまった。


「同窓会の時に、自社製品の売り込みをしたんだ。金澤さんは小さな頃からアトピー性皮膚炎に悩んでて、うちの化粧品は肌に合うみたいだ…と言って喜んで使ってた」


3年前にあのカジュアルダイニングのメインシェフをすることになり、オフィスの懇親会にも使って欲しい…と名刺をくれた。

それから利用する度に親しく話をするもんだから、2人の仲を疑われた。


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