『コーン』な上司と恋なんて
「部署の連中は『同級生だ』と言っても信用しないと思って、噂も放任してたんだけど……」


そう話すと、思いきり残念そうに息を吐いた。
私の顔を覗き込む目がやたらと真剣そうで、酔ってた雰囲気すらも吹き飛ぶ。


「……それを今凄く後悔してる。あの噂を早くから打ち消しておけば良かったと思う」


「どうして?」


ドキン、ドキン……と胸の鼓動が鳴りだす。
息苦しい気がするのは、やっぱり酔いが醒めてないから?


「君に疑われたから。バツイチでもないのに、そう思われたのが悔しい」


「………」


箸を持つ手が震えてくる。
力が入らなくなってきて、ポロン…と一本、床に落っことした。


近付いてきた課長が箸を拾う。
それをテーブルの上に置き、私の顔を見つめた。


「俺を嘘つきだと思っただろう?そんな風に思われたのが心外でいけない」


「……何故?」


「そりゃ……」



箸を置いた課長の視線が注がれる。
食い入る様に見てるのは、私だけじゃないと思う。



「……芦原さんのことが、好きだからだろう……」


耳元で囁かれた声により、心音は更に加速する。
一気に酔いが回ったような気分になって、思わず軽くフラついた。


「おっと!」


仰け反りそうになった背中を抱きかかえるようにして支えられる。
課長に抱き止められる様な格好になり、体温が急に上昇した。



「課長」


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