『コーン』な上司と恋なんて
胸の鼓動が必要以上に鳴ってる。
耳の鼓膜に響いてくるようで、クラクラして仕様がない。


「私は……」


手に残ってたもう一本の箸も取り上げられた。
空になった手を握りしめ、課長が指先に触れる。



「この手で誰も触って欲しくないな」


真っ直ぐに向けられた眼差しは、今まで見た中で一番優しいものだ。



「その目も」


指先から離れた手が、サラリと前髪を掻き分ける。

露わになった額を優しく摩りながら、唇が軽く触れた。



「他の男なんて見なくていいから」


どアップを間近にしながら、流石に何も考えれなくなって……


ドキドキしながら頷いた。
課長の声も、かかる息も、全てが全部、苦しいくらいに好きだ。



「課長が……好きです」


その言葉を言うのも苦しい。
見つめ直す目が潤みだして、涙が溢れそうになったーーー



「俺も、芦原さんが好きだよ」


そう呟く課長に身を委ねた。
頬を包む両手が熱くて、心の奥まで沁み渡っていく。


ふわっと柔らかい唇が触れた。
その感触は、これが夢じゃないと物語る。


ぎゅっと目を瞑るとキスを繰り返された。

胸が苦しくて切なくて、感じたことのないくらいに気持ちがいい。




「実家へ帰ったのは……」


唇を離した課長が囁く。
薄目を開けると、ウットリとした課長の黒目と出逢った。


< 147 / 174 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop