『コーン』な上司と恋なんて
私に抱き付いてた手が離れてバッテンを作る。


(悠生!あんたってエライ!)


今度は私の方から悠生を抱き締めたくなった。


「だって、ホントじゃないの」


「実家にいた時も家事とか一切しなかったんだしね」


痛い所を突く母と姉。
私の立つ瀬はすっかり無くなってる。


「つばしゃはお菓子が作れるからいいの!」


悠生、それは慰めにもならないけど嬉しいよ。


「悠くん、ありがとうね」


お礼を言えば、悠生は誇らしそうな顔をする。
その顔に笑みを返して目線を向ければ、課長は何だかつまらなそうにも見えて。


「あ、あの…」


とにかく課長の持ってきたケーキでも食べない?…とその場をやり過ごそうとしたら。



「お父さん、お母さん、それからお姉さんとゆうき君」


課長の緊張気味な声が聞こえ、ギクッと彼を見直した。
両親と姉の視線も注がれ、一瞬課長が躊躇したようにも見えたけど。


「俺は翼さんと結婚したいと思っています。今日はその意思があることを伝えに来ました」


あーあ、とうとう本当に喋っちゃった。
課長と私の付き合いなんて、まだひと月程度なのに。


「俺にとって彼女は気持ちの落ち着ける相手なんです。どうか付き合いを認めて下さい」


深く頭を下げる課長を、姉も母もウットリとした目で見てる。
私はまさかここまで真面目に言うとは思わず、感動しきって涙が潤んできてしまった。


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