『コーン』な上司と恋なんて
彼も目を逸らさずに父を見返す。
私も母も姉も、緊張を味わいながら見守った。


「……それなら君に翼を託す。飽きても絶対に手を離したりはしないでくれよ?」


「はい。それは絶対にありません」



(課長……)


それは絶対にこの場凌ぎになんて言ってないよね?
ホントにそうしてくれるんでしょ?


そう願いながら顔を見たら、課長は嬉しそうな笑みを浮かべてた。


(本気だ~~)


何でこんなベタな展開に涙が出てしまうんだろう。
自分が結婚する時は、父がもっと惜しがるかと思ってたのに。


ボロボロ…と泣き始めた私に抱きつき、悠生が「泣いちゃダメ!」と言いながら自分も泣き始める。


「悠くん〜〜!」


ぎゅっと抱きつく相手を間違えたせいで、私はこの後暫く課長の機嫌を損ねてしまった。


高校教師をしてる由輝さんが、部活の練習試合から帰ってきたのはその後で、姉から話を聞いて「へぇ。そうなんだ」と驚いた。



「翼ちゃんはイケメン好みだったんだね」


私のことを由輝さんが「ちゃん」付けで呼ぶのは最初から。
でも、どうやらそれは、課長が一番気に入らなかったらしく。





「……なんかムカつく」


悠生並みに気を悪くしてる彼に「何が?」と聞いた。


「お姉さんの旦那だか何だか知らないけど、俺の前で『翼ちゃん』は止めて欲しい」


「えっ、でも、私も由輝さんて呼ぶよ?」



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