『コーン』な上司と恋なんて
ジュワッと口の中に溜まるタレの味が堪らない。
こんな美味しい油揚げ、食べたことがない。


「ほいひい!」


熱さもあって、ハフハフしながら頬張った。
課長はそれを聞いて笑い、「言った通りだろ」と言った。


「はひ!ほんほにおいひいでふ!」


厚みがあるから喋り難い。
でも、噛んでたら直ぐになくなる。


(これならあっという間になくなるかもしれない)


もっちりうどんと油揚げの相性も良かった。
どちらも噛み応え十分だけど、甘めの味付けのおかげで箸が進む。

パクパク食べてるうちに、あっという間に油揚げもうどんもなくなってた。
でも、さすがにお出汁を全部飲みきることだけはできなかった。



「ご馳走様でした!」


箸を置いて直ぐに手を合わせた。
こんな美味しい物が田舎の店で食べれるとは思わなかった。



「結構お腹に溜まっただろ」


「はい。もう今は動きたくないくらい一杯です」


ふぅ〜…と大きく息を吐くと、「わかる」と言って笑われた。
課長のリラックスした顔を見れて、胸の方も一杯になる。



(…あ、そうだ)


ゴソゴソとバッグの中を探る。
課長のワンコを思いながら買った御守りを手に取り、スッと前に差し出した。


「課長、これ、ワンコ君に」


ススス…と前に差し向けると、課長の目は御守りの入った白い袋に釘付けとなった。


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