『コーン』な上司と恋なんて
「その後で翼の実家にもお邪魔したじゃないか」


「そ、そう言えば……」


そうだ。
あの後、車の中で広幸さんのことを「課長」と呼んだら機嫌を損ねてしまって……。


部屋に帰ってからも態度が冷たくて悄気たんだ。

てっきり自分の部屋へ帰ってしまうだろう…と覚悟したけど、そのままお泊りしてくれてたんだっけ。



(……ああ、それで朝になったら、絶対に許して貰おうと思いながら眠ったんだ……)


そうだった…と思い出しながら息を吐いた。
1年後のことを夢に見るなんて、私はどうかしてる。


「ごめんなさい…。夜中に大騒ぎして…」


まだ胸がバクバク鳴ってる。
俄かにこれが現実だとも思えない感覚も残ってる。



「でも、良かった……夢で…」


いや、前半部分は夢の方がかなりいいんだけど。


「怖い夢でも見たのか?」


広幸さんもすっかり目が覚めてきたみたい。


「うん……夢の中で広幸さんを迎えに行こうとするのに、どうしても足が玄関に進まないの。怒らせたくないのに、怒ってしまいそうで怖かった……」


昼間の彼の態度がずっと胸に引っ掛かってたせいだ。
でも、それを言えばまた冷たくされそうだし。


「俺が翼に素っ気なかった所為かな。だからそんな悪夢を見せたのかも」


悪かった…と謝られた。
子供染みた態度だった…と、自分の非を認めてる。


「ううん…。もういいの……」


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