『コーン』な上司と恋なんて
未来を覗き見た様な夢も見れて幸せだった。
あれが現実になるように、今日からまた頑張ればいい。


「お詫びしてやるよ」


彼の腕がスッポリと身体を包んだ。
冷や汗をかいて冷えた背中が温もる。


「あったかい」


夢の通りにならなくてもいいから、この温もりの中にずっと居たい。



「翼」


「何?」


名前を呼ばれたら直ぐに返事のできる距離。
これが私の望む生活なのかもしれない。


「…これ、あげる」


枕の下から出された小さな四角い箱。


「本当は眠ってる間に指に通そうかと思ったけど…」


水色の箱は、有名なアクセサリーブランドのだ。


「給料3ヶ月分よりは高いぞ」


ピンクゴールドのリングについてるのは、ルビー?


「ミィと同じように、これを通したら翼は俺だけのものだな」


左手を持ち上げて通される。
薬指の根元に光る石が、あの日ミィに付けた首輪みたいに見えた。



「広幸さん……」


こんなのいつ準備をしてたんだろう。

私は何も知らなくて、まさかこんな早く実家へも挨拶に行ってくれるなんて思いもしなかった。


「よく似合うよ」


そりゃ、貴方がくれたんだから。


「ありがとう。一生大事にします」


ぎゅっと手を握ってお礼を言った。

バレンタインデーには、私も今度こそ素敵な贈り物をしようと思う。


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