『コーン』な上司と恋なんて
反省しながら腕を伸ばしていると、面食らった顔つきの課長の手が伸びてきた。

ポトン…とその掌の上に、握ってた物を離して置いた。

扇のケータイアクセは小さ過ぎて、課長の手の上ではそれが余計に際立つ。


「それ、御神籤に付いてたんです。大吉の御神籤だったから、きっと良い事あると思います。しかも扇は出世運が良くなるそうですよ。課長もお仕事上で何かご利益があるといいですね」


小さいけど意味があるんだと、必死になって説明した。
呆れてる様な顔の課長は、ポカンとして目は丸くなってる。


こっちはその薄いリアクションに冷や汗をかいた。
ご利益どころか、自分にはあまり必要ないと思った物をあげただけだ。


バツが悪いから俯いた。
課長に申し訳なくて、シュン…と肩も小さくなる。





「ありがとう」


その声が聞こえてハッと視線を前向きにした。
恐る恐る顔を上げると、課長の唇は緩やかにカーブしてる。

前髪の隙間から見える目元が弧を描いて見える。
睫毛の多い二重瞼の目が細くなって笑ってる。


「大吉の御神籤に付いてたのなら効果も期待できるよな。仕事が上手くいくように早速付けさてもらうよ」


言ってるそばからスマホを取り出し、ストラップの根元の輪っかに付け始めた。



「うん、何かご利益ありそうだ」


人差し指で扇を掬って見てる。
まさかそんな行動に出てくれるとは思わず、言葉も出せずに課長のことを見つめた。


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