『コーン』な上司と恋なんて
両親は孫と住みたいが為に、私の一人暮らしを許可して追い出した。


おかげで私は今年の春から一人暮らしを始めている。
そのせいで、毎月していた積立貯金の金額も減らさないといけなくなった。

合コンに何度も出られるほどの余裕すらもなくなり、出たからといって彼氏が出来る訳でもない。


転がってもない奇跡的な出会いも見つからず、有るとしたら昨日のような偶然だけ。


(それも課長にしたら取るに足らないことだよね)


例え一瞬の様な出来事でも、私にとってはハッピーだと言うのに。


(あーあ、こっち向いてくれないかなぁ)


パソコン画面から目を離し、課長のデスクに走らせる。


昨日あげたストラップはまだスマホに付けてくれてるだろうか。
もしかしたら彼女に見つかって、取り上げられたりしてるんじゃないだろうか。


こっち見て、こっち見て…と念を送り続けていたせいか、課長の視線がチラリと動いた。

途端にドキン!と鼓動が響き、恥ずかしくなって俯く。



(バカじゃん。これじゃ念じた意味ないよ)


そう思って顔を上げると、思いがけず課長の眼差しとぶつかる。

あちゃ…と思う私とは違い、課長はフ…と優しい笑みを浮かべた。


それだけでも天に昇りそうだと言うか、幸せで胸が張り裂けそうになる。
ドクドクと要らない心音が聞こえだし、やっぱり耐えきれずに俯いた。


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