『コーン』な上司と恋なんて
「良かった」


ホッとしながら涙ぐみそうになるのを堪える。

課長は缶コーヒーを飲みながらスマホの画面をタップしてる。
そのストラップの根元には、扇のアクセが付いてるままだ。


(嬉しい…まだ付けてくれてる……)


本当に部下思いの人だこと。
これからも課長に付いて行きますからね…と言いたい。



「芦原さん」


「なんれふか?」


海老フライを頬張った時に名前を呼ばれ、口にしたまま返事をしてしまった。
課長の目は一瞬点になり、私はカァーと顔が熱くなる。


「あ…いや、その、昨日はあれから何処か寄ったのか聞こうと思っただけなんだ」


課長の声に慌てて海老フライを噛み切った。
モグモグと急いで噛んで、飲み込んでから「いいえ」と言った。


「私、あの辺りのことは全く知らないから何処にも寄らずに帰りました。片道3時間もかかるし、運転はあまり上手くもないので」


「そうか。もう少し足を伸ばせばいい場所がいろいろと有るんだけどな」


「そういう情報はあの食堂で教えて欲しかったですよ」


「ごめん。それもそうだな」


すんなりと謝る課長の人の良さに呆れるというか。
クレーム処理の達人は、謝るのが得意なんだろうか。


「いいですよ、そんなの謝らなくても。それよりもいい場所あるなら教えておいて下さい。次行った時に寄ってみたいと思いますから」


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