『コーン』な上司と恋なんて
年末年始休暇に入るまでの日々、課長との触れ合いは全くないに等しい感じだった。

金曜日の仕事納めの日も「良いお正月を」と言われただけで別れ、そのまま年明けまで会えない日々が続いた。


年始の休暇は4日まで。他よりも1日長い分だけ気楽だ。



「つばしゃ」


舌ったらずな呼びかけに「ん〜?」と声を出して、雑誌に落としていた目を向ける。

姉の一人息子の悠生(ゆうき)が寄ってきて、ニコニコしながらせがんだ。


「おかし、作って」


悠生は4歳。
男の子くせに睫毛が長くて黒目がウルウルしてて可愛い。


「いいよ。悠くんも手伝ってね」


この子は私の手作りお菓子をいつも喜んで食べてくれる。
おかげで私が帰ると虫歯になりそうだと、いつも姉に言われる。

自分のエプロンを身に付けると同時に悠生にも付けてやった。
キッチンのテーブルの上に材料を並べ、料理番組のテーマ曲を悠生が流しながら始める。


「今日はホットケーキミックスを使ってマフィンを作りたいと思います。材料はホットケーキミックスの粉一つ、アイスクリームのバニラ味1カップ、牛乳少々とりんご、バナナです」


先生のような言い方をすると、悠生はパチパチと手を叩いてくれる。
2人で粉を飛ばしながら作り合っていると隣の部屋から姉がやって来た。



「あっ、またお菓子作ってる」

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