『コーン』な上司と恋なんて
ニッコリ微笑む男性のことを知らん顔できなくらいに私は知ってる。


(な…何で、ここに古手川課長が……)


顔を引きつらせたままで思い出すのはオフィスでの日々。目の前に立っているのは、紛れもなく勤めてる部署の上司だ。


『古手川 広幸(こてがわ ひろゆき)』さんと言い、年齢は30代半ばから後半だと思う。

身長180センチ前後で、割と筋肉質っぽい身体つきをしているとか何とか。

趣味はゴルフの打ちっ放し、お酒は付き合い程度しか飲めないと聞いたことがあるけど……


(でも、それも事実かどうかは全て謎なんだよね)


オフィスでの噂プラス、この人の言うことは半分嘘だと思ってた方がいいと先輩達が話していた。



「こ、こんにちは。古手川課長…」


はは…と顔を引きつらせて笑みを浮かべる。

ニット帽を被った課長はいつもより少し若く見えて、普段は前髪に隠れてる額が全部出てる。

目尻のラインに沿って流れるように生えた眉毛はすっきりと整えられ、意外にも睫毛が長くて多い。

小麦色…とまではいかないけど、程よく日焼けしてるのはゴルフ練習のせいなのかどうか。


「それにしても、こんな所まで祈願に来るなんて余程の大願なんだね」


クスッと笑い、穏やかそうに話す人もどうやらこの偶然に驚いてるらしい。


「わ、私はちょっと、ネットで調べてたら面白そうな場所があるなと思ってですね」


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