『コーン』な上司と恋なんて
「急に置いて帰ったみたいな感じになったから心配で電話した…。何事もなく無事に帰れた…?」


話してる声に覇気がない。
心配してかけたと言うよりも、誰かと話したいと思ってかけたきた様な雰囲気だ。


「私なら大丈夫でしたよ。駅のコンビニでワインのミニボトルとチーズを買ってウチで飲み直しましたから」


何となくだけど、明るく話してあげないといけない様な気がした。
課長はそれを聞くと、「そっか…」と少しだけ安心した様な声を出した。


「それよりも風邪は大丈夫ですか?昨夜かなり冷え込んでたし、ご実家に帰るまでの間に寒い思いをしたんじゃないですか?」


さっきまでは半分ウソだと思ってた。
でも、今の課長の声を聞くと、満更ウソでもないように思う。


具合が悪くて心細いから電話したくなったんだろうか。

金澤さんにではなく、どうして私だったんだろう。



「風邪なんてどうもない。熱もないし、喉が少しいがらっぽいだけだ」




(……なんだ。やっぱりウソか)


そう思ったけど許そうって気になった。

電話の向こうにいる人が、わざわざ私を選んでかけてきたのだからいい。


「だったら早目に治りそうですね。月曜日には出社できますか?」


「うん…。多分」


「お待ちしてますよ。昨日のこともリベンジして欲しいし」



偉そうになんてことを言うんだ。

課長の顔が見えないことをいいことに、とんでもない言葉を発してしまった。


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