『コーン』な上司と恋なんて
結婚生活は2年がいいとこだった…とか、子供は出来なかった…とか、何処から仕入れたのかわからない事まで喋り合ってた。



先輩達がトイレを出て、ようやく私も個室の外へと出られた。

聞き齧った言葉の数々に辟易として、グッタリと疲れきりながら部署へと戻る。


自分の椅子に座ると大きな息を吐いた。

パソコンの陰から部署の上座に座る上司を思い出して、ボンヤリと考え込んでしまう。



私は古手川課長が独身だと、ずっとそう信じてきた。

彼女はいるんだろうな…と思ってたけど、1人に決められるまでの決断力がないようにも思えてた。


それは課長がミステリアスな人で、本音を語れる人にまだ出会えてないからじゃないのか。

課長が本音を語れる人とは、一体どんな人なんだろうかと、妄想を勝手に膨らませてきたからだ。


課長は部署の「金棒」として、毎回クレーム処理を担当している。

お客様からは腹の立つことも言われるだろうし、バカにされることだってあると思う。


それを上手に言い含めて機嫌を直す。

そんな課長に似合うのは、同じくらい仕事のデキるキャリアウーマンでないといけない。

家庭との両立もきちんと出来る人で、美味しい料理が作れて、美人で優しくて笑顔が似合う女性。



そんな人なら古手川課長には釣り合いそうだと思った。

残念ながらオフィスにそんな人が居なくて、だからこそ独身に違いないと思い込んでた。


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