『コーン』な上司と恋なんて
こっちは何も可笑しくないから、課長の笑う意味がわからない。


でも、どうやらツボにハマったらしく、課長はお腹を押さえながら言った。


「いい物買ってきてやる。大人しく待ってな」


そう言うと私の遠慮する声も知らん顔で部署を出て行った。

課長の言う「いい物」が何か知らないけど、まるでワンコの様な気分に陥る。


(何も欲しくないのに、いい物って一体何……?)


仕様がないからデスクにうつ伏せたままで待った。

ウトウト…と仕掛けてたら、トントン…と肩を叩かれた。



「ん……?」


顔をゆっくりと持ち上げると、目の前にあったかい湯気を感じた。

ほわっと香るコーンの匂いに、瞼をパチパチと動かす。


「これくらい飲めるか?」


マグカップに入れられてたのはコーンポタージュスープだ。

胃の負担が少ないようにしたと言い、お湯を若干多めに入れたと説明を受けた。



「課長が作ってくれたんですか?」


私の為に?わざわざ?


「木曜日のお詫びを兼ねてな。飲めるだけ飲んでみた方がいい。空腹になり過ぎても胃に悪い」


食べれそうならオニギリも食べろとデスクに置いていく。

自分は上座のデスクに戻り、手巻き寿司を片手に仕事をし始めた。



「あ……ありがとうございます」


思い出したようにお礼を言うと、離れた場所から「どういたしまして」と返事がきた。


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