『コーン』な上司と恋なんて
きゅん…と胸の鳴く音がして、スプーンの入ったマグカップを持ち上げる。


ズズッと飲むと丁度いい温度で飲み易い。

課長の作ってくれたスープは、もたれた胃には丁度いい感じ。



「美味しい…」


呟くと課長の声が「そうか」と言う。

その声に頷きだけを返し、ゆっくりじっくりと味わわせて貰った。




「ご馳走様でした。…あの、代金はお幾らでしょうか?」


課長のデスクに行き、そう聞いた。

オニギリも食べれそうだったから頂いた。
胃のムカつきは取れ、空腹感から来るものだったんだ…と判明した。

課長は書類に落としていた目を向け、「要らないよ」と答える。


「そんな訳にはいきません!この間から奢って頂いてばかりだし」


稲荷神社の茶屋から始まり、新年会の打ち合わせの時のランチもご馳走になってる。


「いいんだ。今日のは先日のお詫びだと言ったろ」


「でも…」


「いいから。そんな高い物でもないしさ」


断る課長に言いたいことはまだあった。

木曜日のリベンジを果たしてくれるんじゃなかったんですか……って聞きたい気分にもなった。


でも、本人を前にして言える訳もなく、私はガックリしながら項垂れる。



「そうですか…。ご馳走様でした……」



ショボくれながら向きを変え、自分のデスクに逃げようとした時だ。

カタン…と物音がして振り向くと、真面目そうな顔をした課長を目が合った。


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