『コーン』な上司と恋なんて
「お休みの間に何かあったんですか?」


朝から自分を追い込むように仕事をし続けてた姿を思い出した。

課長のことを気にしてたから、そんなふうに見えてただけなのかもしれないけど。


「金曜日のお電話を下さった時も変だな…と感じたんです。私の気のせいならいいんですが…」


取り敢えず今は課長を1人でこの場に残してはおけない。
何となく、そんな気がしてやれなかった。


古手川課長は私の言葉に一瞬だけ目を見開いた。
でも、直ぐに顔を伏せ、「何もない」と言う。


「だったらいいんです。でも、ここは寒いので入りましょうよ」


また風邪を引いちゃいますよ…と笑うと、俯いてた課長の腕が伸びてきた。


ビクッとする私の肩を抱き、とん…と額が乗っかる。



「……悪い。今だけでいいから肩貸して」



明らかに鼻声だ。

しかも、もしかして泣いてる?




「課長……?」


何があったんだろうか。

声こそ出さないけど、じっと堪えてるみたい。




「課長……」



そ…と背中に手を回して撫でた。

風横が吹き荒んできて、さすがに寒いと思ったから。


鼻を一回だけ吸った課長は、ぎゅっと私の肩を握った。



「悪かった。寒いよな」



声は泣いてなんかない。

力強く聞こえて、何とか自分を立て直そうとしてるみたいだった。



「入ろうか」


下を向いたまま背中を向ける。


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