『コーン』な上司と恋なんて
「……芦原さん」


どうしてなかなか、鋭いところを突いてくる。

確かに考えたくないことがあって、朝から飛ばし気味に仕事はしていた。

誰も違和感など感じてないのかと思ってたのに、彼女はそんな俺を観察してたのか。


「課長が話したくなければ聞きません。でも、今のままだと要らないことばかり考えてしまいそうでいけないから……」


どう収めればいいんでしょう?…と尋ねる。
彼女自身の気持ちの収めようなんて、俺にもどうしていいか解らない。


「取り敢えず中に入ろう。それから仕事が終わるまで時間をくれ」



誰にも話したくない様な気持ちがあった。

芦原 翼は不満気に俺のことを見上げ、「はい…」と詰まらなそうな表情を見せた。



そう言えば、彼女は人の話を熱心に聞いてくれると同僚の白河 未希が褒めていた。

自分が結婚した相手と喧嘩をした時も、朝まで愚痴に付き合ってくれたんだと言って笑ってたっけ。


そんな相手になら話して聞かせてもいいのかもしれない。

もしかしたらあの時も、その為に縁があったのだろうかーー。



キィ…とドアを開けると、先に行きます…と芦原は腕の中を逃げて行く。


思わず引き止めてしまいそうになり、慌てて自分を抑えた。




(俺……今、何をしようとした……?)



自分の行動を制御出来そうにないくらい、まだ参ってるんだろう。



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