『コーン』な上司と恋なんて
コツコツ…と廊下を歩きだせば、部署の違う女性達から、挨拶をされたり声をかけられたりする。


仕事柄、どんな相手にも愛想良くする癖が付いてる。

謝るのは日常的になってて、思ってなくても「ごめん」と言えるようにまで慣れていた。


そんな俺の胸の内を教えて下さい…なんて言う女性は、多分芦原が初めてじゃないだろうか。


そんな相手になら甘えてみてもいいだろうか。

笑わずに、共感してくれるだろうか。



(話してやってもいいか。彼女なら他言はしそうにないし)



部署に到着する頃には覚悟もできた。

終業後に芦原 翼を誘おうと決め、午後はまた黙々と仕事を進めた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



午後6時を回り、定時で上がりたい者はデスクの上を片付け始める。

あちこちの席から「お先に失礼します」の声が掛かり、「お疲れ様」と労う。

午前中の仕事をいい加減にこなしていたらしい芦原は、隣の席の白河 未希が帰るのを羨ましそうな目で見ていた。



「また明日ね」


「うん、気をつけて帰って」


手を振ると、息を吐いてパソコン画面に視線を向ける。

週明けの月曜日は土日分の注文も入ってるから、それを間違えずに発注しなければならない。


自社製品を購入してもらうお客様にはポイントに応じた景品のカタログを添付している。
新規のお客様には、トライアルキッドも送付する。


< 69 / 174 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop