『コーン』な上司と恋なんて
インターホンを押すと店員が来た。

芦原は刺身定食を二つと言い、一つは炊き込みにして下さいと言った。

それから俺を振り返り、「アルコールは飲まないんですか?」と聞いた。


「え…と、そうだな…」


一瞬飲まないでおこうかと思ったが、まともに話せなくてもいけないと思い直し、生ビールの中ジョッキを頼んだ。



「少々お待ち下さいませ」


店員はそう言って逃げた。


芦原は正座していた脚を崩し、手元に置かれた水を飲み込む。



「胃の調子はいいのか?」


空腹を感じているんだから平気なんだろうと思うが聞いてみた。

芦原は頷き、「課長の買ってくれたお昼のおかげで生き返りました」と言った。



(大袈裟なヤツだな)


そう思ったが敢えて口にはせず「そうか」と言うだけに留めた。

芦原は無理矢理話を聞き出そうとはせず、かと言って自分からは話かけもしないで黙ってる。


出しゃばりではないんだ…と思った。
ただ、本当に話を聞きたいだけのようだ。


中ジョッキのビールが運ばれてきて、芦原は「いいなぁ」と呟く。

さすがに昼間までの調子を思うと飲む気もないらしく、「頼まなくていいのか?」と勧めたが断った。


「大人しく水を飲んでます」


お冷のグラスとジョッキで乾杯してゴクゴクと二口だけ飲んだ。

トン…とジョッキを置くと、ジッとこちらを見ている目とぶつかる。


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