『コーン』な上司と恋なんて
「ああ。最後を看取ってやりたい…と、常々従兄弟には話をしていたからな」


「それで?…間に合ったんですか?」


身を乗り出そうとする彼女に微笑み、「何とか」と頷くと…



「良かった〜〜」


心から安心したように背中を仰け反らせて肩を落とした。

緊張していたのか、目に薄っすらと涙が滲んでいる。

こっちはその涙を見ながら、あの日のことを回想した。



「俺が家に帰り着くと、グッタリしていたジョンが顔を上げた。『クゥン』と甘える様な声を出して、必死で起き上がろうとするんだけど………」



堪えきれずに涙が目に浮かんできてしまった。

ビールの力を借りても、やはり落ち込みは酷い。



「結局、起き上がられずに首だけ動かして鳴くんだ…。俺は堪らなくなって、必死でジョンを撫で続けた……」


不覚にも部下の前で涙が溢れた。
芦原はそんな俺を笑いもせず、じっと黙って見守ってる。


「撫でていたら急に呼吸が乱れだして、短い呼吸を数回繰り返した後で息を長く吐いて力が抜けた……。腹の動きが止まり、息をしていないな…と気づいた……」


手足を伸びきったままのジョンを従兄弟が診断して死亡が確認された。

最後まで面倒を見ていた母は、ジョンの身体にしがみ付いて大泣きした。


「よく頑張ったねぇ」と何度も褒め、「いい子だった…」と摩りながら言い続けた。


「幸せを沢山ありがとう…」


最後はそう言ってお礼も述べた。


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