『コーン』な上司と恋なんて
最後の最後で会えた時、具合が悪くていけなかったと思うのに必死で鳴き続けたと聞いて、私の膝の上でゴロゴロ…と喉を鳴らしながら逝ってしまったミィのことを思い浮かべた。


頭が良くて人懐っこくて、本当に本当に、大切な家族だった。

飼い始めてから10年以上もの長い間、私と家族のことを見守ってくれた。


「すみません…こんな話を聞かせて…」


課長の胸の内を聞かせて下さいと言ったのに、これではまるで反対。

私は気を取り直そうと涙を拭くけど、どうしても零れ落ちてくる。

髪の毛を撫で続ける課長の手が優し過ぎて、どうにも止められそうになくなった。



「芦原さんがジョンに…と長寿御守りをくれただろう。あの時、俺も同じ思いであの神社へ参拝してたんだ」


撫でていた手を止めて話しだした課長のことを見上げた。

涙の止まってる顔が、唇の端っこをきゅっと持ち上げながら続ける。


「狐も犬も変わらないだろうって思いで頼んだ。1分でも1秒でもいいからジョンを長生きをさせてやってくれって。実際、あの御守りを付けてから暫くの間、ジョンの体調も少しは良かったそうなんだ。家族からも『いい部下がいるね』…と褒められた」


「サンキューな」と課長に言われ、改めて恥ずかしさと同時に申し訳なさが広がっていく。


「私は何も知らなくて……間抜けなことをしてしまってすみません……」


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