『コーン』な上司と恋なんて
(良かった…)


そう思ったらいけないんだけど。


『良かった。未希が辞めたらどうすればいいか悩んじゃった』


ホッと息をするスタンプを貼った。

未希はそれを見て何を思ったのか……。


『翼もさっさとお嫁に行きなさい!私と違ってあんたは専業主婦が向いてる!』


頑張れ!とテープを持ったクマのスタンプが送られてくる。

私がそれを望んだところで誰が叶えてくれると言うんだ。


『ありがとうね。精々ガンバルわ〜〜』


そう送り返して終えた。


顔を上げれば、上座のデスクで課長は今日もバリバリと働いてる。

月曜日に見られた様な気負いは見られていない。

仕事に自分を追い込んでる風もなく、気持ちは幾らか落ち着きを取り戻してるみたいだ。



(良かったな……話を聞いて……)


あげたんだか貰ったんだか、両方だったけど。



(もう一度、あんな風に話ができるといいな)


そんな機会が何処にある。
課長には素敵な女性がいるのに。



(金澤さんか……)


コックコートの似合う女性を思い出すと、胸の奥がチクッと痛い。

出てくるのは溜め息しかなくて、気持ちは落ち込んでいくだけ。


(あーあ、どうしたらいいのよ。私は……)


遣る瀬無い気持ちを持ったまま顧客管理のページを開いた。

12月に発売になったばかりの新シリーズの使い心地を顧客の感想ノートからチェックする。


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