『コーン』な上司と恋なんて
『いつも御社の商品を購入しています。先月発売された『オリエンタルローズ』の化粧水を付けたところ、翌日から赤い発疹が顔中にポツポツ…と見られるようになりました。皮膚科に行って診てもらうと、「疲れからくるものでしょう」と言われたんですが、もしかしたら私みたいなアトピー性皮膚炎を持ってた人間には、相性が悪いのではないかと思いました』


「何かの参考にでもなれば幸いですが…か。丁寧な人だな」


クレームとは違うようだな…と課長は一先ず安心した。
私もそうは思うけど、蔑ろにしておいてもいけない雰囲気が漂ってる。


「この感想を寄せてくれた顧客は匿名希望か?誰が書いたか判りそうか?」


課長の質問にカチャカチャ…とパソコンを操作する。


「匿名ではないみたいです。個人を特定してみますか?」


「ああ。市内に住んでるようなら直接話を聞きに行きたい」


課長のクレーム対応が穏便に済まされるのはこの速さがあるからだ。
その為に上長の地位にあるんだ…と、いつも皆に語ってる。


課長の言葉に顧客のページを開いた。
氏名、住所、年齢と生年月日が入力されている。

そこで感想ノートの名前を見つけだすのに大して時間はかからなかった。

購買者は『カトレア』という比較的購買総額の高いクラスの人で、その人の名前は……



「何だ。金澤さんじゃないか」


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