『コーン』な上司と恋なんて
詩桜里(しおり)という名前は珍しくて目立ってた。
課長はその名前を見つけると、直ぐに会いに行ってくる…と背中を伸ばした。


「わ…私も行っていいですか!?」


課長1人に行かせたくない気持ちが動いた。
私が言ったところで何も役にも立たないのに。


課長を見たらキョトン…とされた。
きっと課長も来ても役に立たないと思ったんだろう。


「芦原さんは付いて来なくてもいいよ。彼女なら顔見知りだし、商品についてのアドバイスを聞きに行くだけだから」


アドバイスなんて言い方で収めてるけど、要するに私は邪魔者って意味だ。



「そうですか。…じゃあお願いします」


納得いかないけど諦めるしかない。

課長と彼女の恋路を邪魔するのも無粋だ。


「帰ったらどうだったか知らせるよ。また何か見つけたら教えてくれ」


ポン…と肩を弾かれた。
気軽に触られてもちっとも嬉しくなんてない。



「はい…」


課長の行けず…と思いながらも承諾した。
私の側から逃げる背中に「イーッ!」と言いたくなってしまう。


(まるで子供みたい)


つまらないからムクれる悠生と同じ。
その顔をすることも出来ないから余計に歯痒い。


課長は自分のデスクから電話を掛け、時間は取らせませんから…と囁き電話を切った。

それから直ぐに席を立ち、「行ってくる」と部署全員に聞こえる声を出して出て行った。


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