『コーン』な上司と恋なんて
「か…課長こそ、どうして此処に?今から社に戻るんてすか?」


ドキドキしながら尋ねると、掴みどころのない人が微笑む。


「それ迷ってんだよな」


狭いコンビニの通路を塞いでたせいか、横をすり抜けてく人達が睨んだ。


「ちょっと出るか」


課長に言われ、なんで私まで…と思うけど頷いた。

課長はホットドリンクのコーナーに立ち寄り、私にジンジャーアップルを買ってくれた。


「毎度すみません…」


奢って貰うのにも慣れそうで嫌だ。
このまま飲みに誘われたら、今日こそは絶対に私が支払う。


「金澤さんの件、どうでしたか?」


誘われるのを期待するなら嫌な話は早く済ませてしまいたい。そんな気持ちで聞いたら、課長は一言「ん?大丈夫だったぞ」と答えた。


それだけじゃハッキリとわからなくて、いえ、あの…と言いかけたけど。


「それより帰るならちょっと付き合ってくれよ。金澤さんの所へ行った後、今まで飲まず食わずで動いてたから腹が空いてやれない」


「いいか?」と聞かれて初めて躊躇ってしまった。

課長には金澤さんがいて、もしかしたら彼女とは一回結婚してる仲かもしれないのに。


(課長にとって私はただの部下なんだし、特別な関係にもなれないなら……)




「すみません…」と断っていた。

課長の顔も見たくなくて、目を伏せたままで続ける。


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