契約彼女にした理由
久し振りに訪れるラウンジの扉を開ける。



「吉良様、いらっしゃいませ。」


「浜崎さん、こんばんわ。」


「篠崎様がお待ちです。」


「…………浜崎さん、ごめんなさい。」


「えっ?」



浜崎の驚いた顔にクスリと笑みが漏れた。


いつもポーカーフェイスの浜崎なのに驚いた顔をしている。



「いえ。」


「………吉良様?」


「謝っておくわ。」



眉間に皺を寄せる浜崎に笑いかけた。



「学は?」


「………案内します。」



浜崎が私を学の席まで案内し始めると、徐々に見えてきた学の視線と絡まる。


初めて出逢った日を思い出す。じっと青い瞳が私を見据えている。


私は拳をギュッと握り締めた。心臓の鼓動が速まるのが手に取るように伝わる。



「………吉良様?」


「………何でもないわ、浜崎さん。」



緊張が浜崎に伝わったのか、私は浜崎に微笑みかけた。
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