契約彼女にした理由
「吉良様がいらっしゃいました。」


「ありがとう。」



直に聞く久し振りの学の声は相変わらず心地好い声だ。


浜崎が席から離れていく。



「葉月、久し振り。」


「………そうね。」



私は立ったまま学を見つめた。学の瞳が揺らめいているようにも見える。



「葉月、座れ。」


「…………。」


「葉月?」



学がソファーに腰掛けたまま、私を見上げている。


その青い瞳をじっと見つめる。



「葉月?」



私は一度目を閉じて大きく深呼吸をした。そして閉じていた目を開いた。



「嘘つき…………。」


「はっ?」



私の心には怒りが込み上げてきていた。


日本に帰って来てるのに、連絡すらくれない身勝手な目の前の男に―――――。


テーブルにある水の入ったグラスを手に取れば、学の手も伸びてきたが………。



バシャッ………。



私の方が早かった。
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