契約彼女にした理由
「吉良様!」



浜崎の叫び声が聞こえてきたが、私は水に濡れた学の顔を見据えていた。


学の閉じていた瞳が開かれ、私を真っ直ぐに見据えてきた。



「………葉月………。」



学の低い低い声が聞こえてきたが、私は怯むことなく見据えた。



「葉月!」



怒鳴る学の鋭い視線と絡まる。



「水を掛けられた理由が分からない?」


「……………。」


「沈黙はわかってるって事よね?」


「…………。」



浜崎がタオルを学に渡している。タオルで顔を拭く学に背を向けた。



「学、さよなら。」



一歩踏み出した私の腕が強く握られた。


後ろを振り返れば、学がソファーから立ち上がり私を見下ろしていた。



「浜崎さん、悪いけどホテルの部屋を頼む。」


「………学?」


「葉月、スウィートにするか?」


「はあ?」


「浜崎さん、スウィートを頼む。」



学が私の腕を掴んだまま歩きだした。
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