契約彼女にした理由
親父がじっと俺の話に耳を傾けている。



「知ってるか?吉良副社長。」


「ああ。娘達を溺愛してるって有名だ。」


「そっか。」



俺は俯き、自然と沈んだ声が吐き出された。そんな俺に親父が身を乗り出して顔を覗きこんだ。



「相談とは?」


「吉良副社長に認めてもらいたい。だから―――。」


「だから?」


「俺にも飯島の力を貸して欲しい。」



俯いていた頭を上げて親父を見据えた。



「本妻の息子のように俺にも――。」


「学、誤解してるようだが、壮大(そうた)は実力でロンドン支社長になった。」


「…………。」


「学、お前は?何か大きな仕事でも成功させたか?」


「………それは。」


「私に反発する気持ちからか、我武者羅に仕事なんてしてないだろ?」



親父の言葉に拳を強く握り締めた。



「学、チャンスはやる。一度、我武者羅に仕事してみろ。それで認められれば、それなりのポストはやる。」
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