契約彼女にした理由
『今日も一緒にいないのね。』


『チャンスじゃない?』


『やっぱり飽きられたのね。』



エントランスを歩けば聞こえてくる噂話。でも今の私は違う。



「葉月、大丈夫か?」


「ん?」


「学さんとは会ってるのか?」


「ふふっ、誠は優しいね、やっぱり。」



隣を歩く誠に微笑めば、眉間に皺を寄せていく。



「もう学さんはいいのか?」


「学?仕事が忙しいだけよ。」


「………連絡きたのか?」


「まあね。今は仕事に没頭したいんだって。」



あの日、学は私を抱き締めたまま、朝まで深い眠りに就いていた。


よっぽど疲れてるみたいだ。そして――――



「葉月、暫く連絡しない。今の交渉が『俺と葉月の未来を左右する』と思って仕事してるから、俺は。」


「そう。なら、頑張ってよ。」


「ああ。それと2度と誤解するなよ。俺は葉月だけだから。」


「わかった………信じるよ、学。」



突然、そこまで仕事を頑張る学が不思議だが、学が頑張るなら応援はする。
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