契約彼女にした理由
そして私の誕生日当日―――。


目の前には腕を組んで学を見つめる父。隣に座る学はかなり緊張しているようだ。



「初めまして。篠崎学です。」


「ああ、葉月から聞いてるよ。付き合ってる彼氏だと。」


「そうですか。」



学が突然立ち上がったと思えば、頭を深く下げた。



「葉月さんを私に下さい!」



静かな部屋に響き渡った学の声に私は学を見上げる。


緊張からか拳を強く握り締めている。



「ちょっと学?」


「葉月さんとの結婚を許して戴けませんでしょうか?」



学の大きな声が部屋に響き渡った。私はチラリと父を見れば、私と視線がぶつかった。



「葉月の気持ちは?」


「私も彼と結婚したいです。」



父を真っ直ぐに見つめて答えれば、フッと笑みを見せる父に安堵した。



「篠崎さん、頭を上げて座りなさい。」


「はい。」



学が私の隣に座り直した。
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