契約彼女にした理由
父との挨拶も終わり、二人で学の運転する車で出掛けた。



「そう言えば、交渉は成功したの?」



ふと学の仕事が気になった。あんなに忙しかった学は落ち着いてきていた。



「ああ、交渉は終了。」


「そっか、良かったね。」


「ああ。今度、日本支社の統括マネージャーに昇進する。」


「……………えっ?」


「だから昇進だ。」


「えっ?たった一回で?」



驚きに学を見つめた。学が嫌そうに私をチラリと見てきた。



「たった一回だが、会社に大きな利益を生み出す交渉だ。」


「飯島CEOのお陰?」


「…………ああ。葉月の父親に挨拶するまでに、それなりのポストが欲しいと頼んだんだよ。」


「ふふっ、父は気にしないのに。それなら尚更結婚式には呼びなさいよ。お父様なんだから。」


「………ああ、そうだな。」



学の表情が穏やかになった。以前は父親の話はタブーだったのに。



「葉月、ありがとう。」


「えっ?急に何よ。」


「葉月に出逢ったから俺は結婚したいって感情が芽生えたし、親父との確執も消えたように思う。」
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