契約彼女にした理由
自席に戻れば、誠がやって来た。



「怒られたのか?」


「………念を押されただけ。」


「念?」


「27がリミットって事よ。」


「…………そうか。元気出せ、夜は飲みに行くか?」


「先約があるの。」


「噂の彼氏か?たまには、同期とも飲んでくれよ。」



誠が私の席から離れていく。誠とは入社以来、ずっと仲良くしてきた。


誠自身も親が大きな会社を経営している。だが彼は三男という事もあり、この会社に入社した。


だが、いずれは連れ戻される運命にあるだろう。



「さっ、頑張らないと。」



私は机にある資料に手を伸ばして作業を進めた。



『27になったらお見合いしてもらう。』


『心から愛する相手が見つかる事を祈ってる。』



父は私の幸せを願っている。


そう―――――


母のようになったりしないように。
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